まちかどエッセー5

歌声喫茶とひまわり号


「ひまわり号」の運動をご存じでしょうか。


 今から三十数年前、障害のある人たちが「列車に乗ってみたい」「旅行をしてみたい」という素朴な願いから貸し切り列車を走らせたのが始まりで、住みやすい街づくりを目指す全国運動です。宮城県でも30年前に初めて仙台駅から岩手県平泉町の中尊寺までその列 車は走り、「みやぎ障害者友情列車ひまわり号」として運動は今でも続いています。


 私は歌声喫茶の仕事の傍ら、ほぼ毎年、その貸し切り列車に乗り、車中や現地で歌う時のアコーディオン伴奏をしています。参加者の中にA君がいます。A君のそばには、いつもお母さんが付き添っておられます。そのお母さんが言いました。「Aは南部さんのアコーディオンが好き」そんなうれしい言葉を聞いてから、私は毎年、ひまわり号で彼と再会するのが楽しみになりました。


「早くアコーディオンを弾いてよ」と催促する気持ちが、A君の表情から少し分かるようになりました。今では当店パラライ力にも お母さんと来てくださいます。うれしいです。30年前に伴奏を頼まれた時、障害者とどう向き合ったらよいのか分からなかった私。懸命に生きるA君をはじめ、障害のある人たちや家族の皆さんとの出会いは、生きることの厳しさと素晴らしさを私に教えてくれました。ひまわり号の実行委員やボランティアの者たちとの3年は、とても大切な思い出です。


 昨秋のひまわり号は岩手県平泉町の毛越寺を訪ねる ツアーでした。小雨の中、多くの参加者と共に寺の庭園をゆっくり歩きました。


 もっとうまくアコーディオンを弾けるようにならなきゃ。ひまわり号の皆さん に喜んでもらえる音楽家にならなきゃ。A君とお母さ んの傍らを歩きながら、強く思う一日でした。


 ひまわり号全国交流会が今月30日、当店で開かれます。どんな歌声が湧き上がるのか楽しみです。私のアコーディオンも出番を待っています。


河北新報 2016.1.18