まちかどエッセー7

うたごえ喫茶とアパルトヘイト


 歌声喫茶を始めて38年。今でも鮮明に覚えている光景がある。25年前のその日、南アフリカから黒人のお客さまがやって来るという。宮城県民会館での公演を終えたアマンドラという歌舞団の一行は「アパルトへイト(人種隔離政策)」に反対し世界ツアー中であった。


 「歌声喫茶パラライカだったら熱い交流ができるはず」と関係者が来店を後押ししてくれたのだった。


 私たちは営業日なので公演は身に行けず、店で歌っていた。すると、「今からアマンドラの皆さんがやって来ます。南部さんよろしく!」。あっという間に店内は超満員。公演の打ち上げ会場と化した。やがて、にこやかな黒人の皆さん4人ほどが到着。本番後の熱気が黒光りの肌に感じられ、美しい瞳が印象的。英語をもっと勉強しておけばよかったと思った。


 ステージの中盤で「演奏していただけませんか」お願いすると1人がギターを手に取り演奏を始めた。滑らかな指さばき。聞いたことのないメロディー。これがアフリカか。これがアパルトヘイトに抗してきたサウンドか」。お客さんも聴きいっている。「素敵な夜素晴らしい二次会だ」と誰かが言った。


 私たちも知っている限りの平和の歌を歌い、彼らを歓迎した。そして最後に「We shall over come」。世界で最も歌われた抵抗の歌だ。知らずに来店されたお客様も常連も一緒に肩を組み、歌った。日本と南アフリカの歌声が混ざり合い、細やかで力強いコーラスが響く。あ〜この歌はこの人たちの歌なんだと心に染みた。


 程なく南アフリカではマンデラさんが大統領になり、アパルトヘイトは無くなった「We shall over come」を歌った人たちは今どうしているのだろう。幸せに暮らしているだろうか。


 後日、あの日の熱いステージを思い出したのか、メンバーのお一人が再度立ち寄ってくださった。その日数人しかいなかったお客さまとの記念写真は今も店のアルバムに残っている。


河北新報 2016.2.15